文章リハビリ

この世はクソファッキン  だけどこの世はAll you need is love. (映画と本と音楽の感想と雑記のブログ)

素敵な女の子

ある冬の日、とても素敵な女の子に出会った。大学の期末試験の日だった。その子は黒い帽子をかぶって、茶色のマフラーを顔半分までごわっと巻いて、黒いフードつきのコートを着て、茶色い靴を履いていた。(ちなみに僕はというと、青いダッフルコートを着ていた。)

出会ったといっても、何か話したわけじゃない。たまたま行きのバスが同じで座席がすぐ近くでたまたま試験科目が同じで座席が近くて、たまたま帰りのバスが同じでさらに地下鉄も同じで座席も近くて、降りる駅まで同じだっただけだ。ついでに言うと定期を切らしていた僕は地下鉄の券を駅で買ったけど、その子も同じように券を買っていた。

僕はもう、舞い上がってしまってその子に話しかけたくて仕方なかった。その試験のつい3日前に見た「グッドモーニング・ベトナム」のロビン・ウィリアムスみたいにマシンガントークで話しかけることができればよかったんだけど、僕にはとても無理だった。

 

帰りのバスの座席はその子の真後ろに僕が座っていた。その子に話しかけて、ああしてこうしてって色々想像は膨らんでいたけれど、結局のところ僕は話しかけることはできないんだろうなって思うとなんだか悲しくなってきて、このままバスに乗って彼女の後ろの席でずっと揺られていたいと思った。

話すことなんてできなくてもいいから、このままずっとアイポッドでお気に入りの音楽を聴きながら、後ろに座っていられたら良いのにと思った。このままずっとポカポカした日差しの中バスで彼女と一緒に揺られていれたら、就職活動もしなくていい、単位の心配もしなくていい、嫌なことは考えないで済む、それはきっととても幸せだと思った。