文章リハビリ

この世はクソファッキン  だけどこの世はAll you need is love. (映画と本と音楽の感想と雑記のブログ)

伏 贋作・里見八犬伝/桜庭一樹(2010)

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犬にも、一寸の命!

 

せめて月に1回くらいは更新を、という思いであわててキーボードを叩いております。この作品を知ったのは映画館。映画の宣伝を見て気になって原作を読んだという流れだ。
桜庭一樹先生の作品を読むのは初めてだったわけだが、この人の文章は良い。好きだ。柔らかく、丁寧だ。地の文も好きだが、台詞が特に良い。浜路の台詞は何とも言えない可愛さに満ち溢れている。さらに伏の信乃が素晴らしかった。終盤の信乃の本音をさらけ出した台詞はすごいよ。
というわけで、始めの1ページからもう好きになっていたので順調に読み進めていたのだが、劇中劇の昔話に入ったあたりから一気に読むペースが落ちた。だもんでかなり時間がかかってしまったのだが、終盤は読むのが止まらなかったな。もう本当に、狩る者と狩られる者という、浜路と信乃の独特の距離で織りなされる会話が良い。っていうか伏達が良い。伏達の、彼ら特有の憂鬱な感じ、飄々としたところ、退廃的な感じに引き込まれる。
伏の毛野が見た月の光・人生の特別な光、それを見たいと願う信乃、伏に生まれるとどうしてか世界に上手く馴染めないって話すところ、もう終盤は色んなシーンが本当に胸に来ましたわ。
ちなみに俺が読んだのは文庫版なのですが、この表紙絵は素晴らしいですね。吊城がまるで犬のよう。天才的だ。
それから、アニメーション映画は原作と比べると明らかに劣ると思う。映像や声優は個人的には良いと思いましたよ。ただ脚本がね・・。文庫版のあとがきで、映画の脚本担当が解説を書いているのだが、そこで「この作品はどんな風に料理してもおもしろい」みたいなこと書いてるわりに、原作の胸にズドンと来る良いところをそぎ落として何とも言えないラブストーリー仕立てにしたところにはびっくりです。
ただwikipedia見てると映画のスタッフはかなり豪華ですね・・。