文章リハビリ

この世はクソファッキン  だけどこの世はAll you need is love. (映画と本と音楽の感想と雑記のブログ)

なぜ私がハンカチを持つようになったか

今日はなぜ私が出かけるときポケットにハンカチを忍ばせるようになったかについて話しましょう。

一番最初はよしもとばななの小説を読んだことがきっかけでした。

もうタイトルは忘れてしまいましたが、とにかくよしもとばななの小説でした。よしもとばななの小説の多くがそうであるように、主人公は女の子でした。そしてよしもとばななの小説の多くがそうであるように、その女の子は男の子の知り合いがいました。その二人は仲がよく、あるシーンで女の子が男の子に贈り物をします。贈り物といっても何か小さいもので、一緒に歩いてて綺麗な石を拾ったからプレゼントするとかそういった感じです。贈り物をぶっきらぼうに受け取りながらも男の子はその小さな石を自分のハンカチにサラッとくるんでポケットに入れます。それを見て主人公の女の子は「なんだか良いなあ」とかそんなことを思います。

それを読んで私は思いました。ハンカチを買おうと。紳士的な柄のハンカチを買おうと。

それで実際ハンカチは買ったわけですが、時間が経つにつれその小説から受けた衝撃も薄れてハンカチを持ち歩くことは少なくなっていきました。すっかり衝撃が薄れてしまってから今年の夏ごろまでは全く持ち歩いてませんでした。

しかし私は二度目の衝撃を受けることになります。就職するための面接で企業のビルを訪れたときのことです。(その日はもちろんスーツでしたので、一応ハンカチをポケットに入れていました。)

面接を15分後に控え私は心を落ち着けようとトイレに行きました。私が入ったすぐあとに、そのビルで働いていると思われるスーツ姿のおっさんが入ってきました。私の方が少し早く用を足し終え、洗面所で手を洗っていました。おっさんも用を足し終え、私の横の洗面台の前に立ちました。当然私は先に手を洗い終え、ハンカチを取り出そうとしました。しかし手が濡れているためになんとも取り出しにくいのです。スーツを汚したくはありませんから。

するとそのとき、ふとおっさんの動作が目に入りました。私は驚きました。なんとそのおっさん、手を洗う前に、手を濡らす前にあらかじめハンカチをポケットから取り出し洗面所の鏡の前の平面のところにハラリと置いているではありませんか!!!!!!!!!

文章では伝わりにくいかもしれませんが、そのときのおっさんははっきり言って優雅でした。濡れた手でハンカチを取り出そうとする私と比べると月とスッポンでした。これがスーツに慣れるということだと思いました。スーツに着られているのではなく、スーツを着ているということなのだと思いました。ポケットからハンカチを取り出し、鏡の前に置く。この一連の動作を私は両の眼でしかと見ました。何気ない所作ですが、そこから私はサラリーマンというものを学びました。

これが私の二度目のハンカチショックでした。

それ以来私は用を足した後、手を洗うときは必ずあらかじめポケットからハンカチを出しておくようにしています。出来る限り自然な動作で。出来る限り優雅に。

当然、出かけるときはうっかり忘れることさえ無ければハンカチを持ち歩くようにしています。