文章リハビリ

この世はクソファッキン  だけどこの世はAll you need is love. (映画と本と音楽の感想と雑記のブログ)

夏と冬の奏鳴曲/麻耶雄嵩(1993)

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「わたしはなんでも知ってるのよ」

麻耶雄嵩の「夏と冬の奏鳴曲」を読みました。
まさしく傑作であり、怪作でした。
が、怪作すぎてまともな感想が書けへん・・・
とりあえず麻耶雄嵩の作品は京都が舞台だったりキーワードとして出てくることが多いので、京都生まれ京都育ちの私としては嬉しいところです。
読後、いくつかのブログのレビューに目を通しミステリ的な謎は何となく分かった気になっていますが、キュビズムだのクラシックだの、予備知識的な学が一切無いため、私の頭脳では理解しきれない部分が多すぎるのです。ただ大掛かりなトリックのための布石的なものというか、細かい部分は実に丁寧だなと感じました。特に桐璃による烏有の和音島への誘導は、見事だと思います。わかった上で読むと、あきらかに烏有は誘導されているのですが、読み進めている途中では(少なくとも私は)誘導だとは感じなかった。エンジンの音、猫の足跡・・・。
作中散々書かれている通り、主人公は暗い過去を背負う忸怩たる男であり、その内面の描写により地の文が増えてページが増大している気はしましたが、それによってこの作品にしかない空気感というか雰囲気のようなものが出ているのでコレはコレでいいのかなと思います。
主人公のイメージは「姑獲鳥の夏」を感じさせる気もします。
作風である、多段的などんでん返し・猛烈にやって来る終盤の展開に、麻薬的にページをめくってしまう。
気合を入れた再読をすれば色々な発見ができるであろう、素晴らしい作品でした。