サマータイム/佐藤多佳子(1990)
「スプーンの上のゼリーは、まるで透きとおった色ガラスのかけらのようなんだ!」
佐藤多佳子の「サマータイム」を再読。
うん、やっぱり良いなあ。力強い、右手だけのサマータイム!
この佐藤多佳子という人は、言葉のセンスが良いですね。
いや、良いというか、素敵なんだ。ちょっとした情景描写も、ふとした感情の書き方も、台詞も!笹生陽子もそういうのがすごく良くて大好きですが、この人も最高です。6年前の、ほんの数ヶ月の体験が心に残り続ける、そして繋がるという物語は猛烈にパワーを持っています。全然、話は違うけど「秒速5センチメートル」「スタンド・バイ・ミー」、そういったものを感じます。
こういう、読者が悪い状況にあるときでも「素晴らしい」と感じられる作品は本当に素晴らしいです。映画でも、音楽でも。実は、僕の人生は今、わりと冴えない状況なんですが、そんなときでもやはりこの物語は素晴らしかった。そんな作品を求めて、日々映画を見たり本を読んだり音楽を聴いたりしている気がします。